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Intermission3: 幸せな時間

2011年01月11日

「Second Lifeで歌手になろう」

この世界では誰でもなんでもできる
彼もそう信じてこの世界に降り立ち、現実の世界で遥か昔に
憧れ、そしていつの日か消えていった希望を新たに抱いていました。

彼はやがてストリーミングで歌を流して皆にそれを聴いてもらう事を
教わりました、彼にはほんのちょっと自信がありました、自分の歌う
カントリー・ミュージックは誰が聴いても素晴らしいと言ってくれたのです。

やがてその歌声に惚れ込み、そして彼の情熱に共感し、愛情までも
芽生える女性が登場します、彼女はとても献身的に彼のサポートを自ら
買って出、その姿に彼もまた感謝の気持ちとそれ以上の感情を持ち
やがて二人はごく自然にパートナーとなりました。


妻となった彼女はある日こういいました。

「わたしが当面のここでの生活費は捻出します、いい方法があるの」

彼女は在りし頃、予約待ちでいっぱいだった超人気SIM群のオーナーと友人でした
そのオーナーが突然彼女に、土地が空いたのでレンタルしないかと言ってきたのです。

彼女はそこにアパートを建てました、きっとここに住みたい人間はたくさんいるだろう
そこに格安アパートを作れば、きっと皆来てくれる、スタッフも必要になるだろうと。

Intermission3: 幸せな時間


彼も自分が歌えるステージをやっと見つけて、得意げに彼女に言いました。

「俺の歌を聴いたライブハウスの支配人が、是非今後も歌ってほしいと言ってくれた」

Intermission3: 幸せな時間


二人は手を取り合って喜びました。


幸先のいいスタートに思えました。


満を持してオープンしたアパートは、最初のうちは物珍しく思った数人が来ましたが
1ヶ月もすると誰も来なくなってしまいました、最上階のペントハウスに住む日本人からの
家賃だけが唯一の彼女の収入となってしまいました。

彼女にはまだ何が起こっているのかがわかりませんでした
もしかすると日本人が住んでいるからかもしれないと思ったことさえありました。

一方夫となった彼も、不満がいっぱいでした
いつも歌を聴きに来る人間が、お客さんが同じなのです。

そしていつまでたっても、数人の歌手で数曲歌うという形式から脱却できませんでした
いつになったら自分だけのコンサートができるのだろう、いつまで経っても同じお客さんでは
自分の名声も広がらないじゃないか、彼は焦っていました。


そんなある日、突然3ブロック先のSIMがなくなってしまいました
オーナーは、整理をしたらいらないSIMが出たので消しただけだと言いました。


さすがに彼女も薄々気づいてはいました、日本人のせいじゃない
あの日本人の女性が言っていた、交通量という数字が確かに全然増えないのです。

Intermission3: 幸せな時間


一方彼もあることに気づきました、カントリー歌手の組合がもう実は自分のいるところだけ
だということに、あっても他の組合はもう名目だけ、もしくはオーナーが逃げ出していました。

「俺がテレビで観たときのSecond Lifeは、歌手が億万長者になっていたんだ」

「私が聞いたお話しでは、賃貸アパートが大盛況だったはずなの」


そう言ってるうちにも、北側のSIM群がどんどん消えていきました。


二人はほんの少しだけ、Second Lifeの実情について知識が足りませんでした。
彼は自分で曲を書いて歌い、MP3で販売しましたが一枚も売れませんでした
誰も彼が曲を出したことを、知る術ももはやありませんでした。

Intermission3: 幸せな時間


そうこうしてるうちに、もう家賃だけが二人の収入となってしまいました
彼が歌っていたライブハウスがSIMごと閉鎖になってしまったのです、でも彼は
諦めませんでした、アパートの隣に小さなステージを作り、そこで歌うことにしたのです。

Intermission3: 幸せな時間


もう二人にとって、お客さんも何も関係ありませんでした
彼が歌い、彼女が聴く、二人にとってそれが一番幸せな時間となりました

いつの間にか自分のアパートだけが一番高い建物になり、見晴らしも随分良くなった
この場所で、いつしか彼の歌声を聴く人もちらほらと増えていったのです。

Intermission3: 幸せな時間


でもその時も終わりが来てしまいました
とうとうアパートの土地の維持もできなくなってしまったのです。


二人は結局最後まで、どうしてこうなったのかを口に出しませんでした
とある大手投資銀行の倒産により、現実の世界が未曾有の金融危機になって以来
現実だけでなく、この世界も大きな打撃を受けていたことを二人は嫌がおうにも
知ることになりました、しかしそれを言ったら何かが終わるかもしれないということも
わかっていたのでしょう。


彼女は最初から最後の日までずっと最上階を借りていた日本人に
丁寧にお礼のノートをしたためました。

"Hi, He and I are shutting down the backyard. I'm sorry for any inconvenience, but it's time has come. I will be refunding your rents. I believe we have 1 day left on the lot. We just decided to do this today. Thank you for being a good tennant and you are welcome to stay a part of our Backyard group."


彼らのほんの少し幸せな時間のお話しはこれでおしまいです
わたくしは上記のお話しを悲劇だとは思いません、少なくとも彼らは現実では
絶対にできないことをしたのです、ちょっぴり寂しいかもしれませんがそれでも
彼の歌に感動した日本人だっているのです、素晴らしいことだと思います。


この世界では誰でもなんでもできる。


皆様が今年も是非、Second Lifeで素敵な時間を過ごされます様に。



Posted by SSOC STAFF at 06:25│Comments(4)雑記


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Comments
(^^)//""""""パチパチ 素直に読ませて頂きましたm(__)m
Posted by みーみー at 2011年01月12日 04:03
最後まで読んでくれてありがと~^^
また関係ないこと書いてるとか言われそうですが;;
Posted by SSOC STAFFSSOC STAFF at 2011年01月12日 20:16
スリンク見てて ここにたどりつきましたw
ちょっといい話というか悲しい話ですけど
思わず何回か読んでしまいました。。

散り際の美しさというか 表現しようないですが・・

今度SIMにも遊びに行ってみます
Posted by keke55 at 2011年02月25日 19:55
うわわ・・・(汁
コメントありがとうございます^^(遅

どうしても、そうですね・・・、他人の眼である
わたくしたちから観ると、悲しく写ってしまいますよね。

ただ、二人の心の芯にある
お金や名声が被ってこない、本当に好きなこと、愛せること
純粋な想いも同時に見えた気がしたのです、ただ悲しいだけの
お話しにするには、余りにもったいないと思いました。

わたくしもかつては自分のパートナーさんだけの為に
慣れないプリムで銃や飛行機を作っていたことがありました
何の技術も知識もないところからでしたが、パーツが出来る度に
掛け値無しに喜んでもらえることがとっても嬉しかったです。

プロセスとしては逆になりましたが、彼らに対して共感できる
部分が多かったのかもしれません。


長々となりましたが
是非、当方のSIMにお越し頂ければ幸いです
お待ちしております^^
Posted by SSOC STAFFSSOC STAFF at 2011年03月03日 09:54
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